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1.結節性硬化症について患者ご家族/初学者向けショートレクチャーズ

1.結節性硬化症について患者ご家族/初学者向けショートレクチャーズ②

 座長 信州大学医学部内科学第一教室 特任講師 林田美江

遺伝のお話


 

講師:金沢医科大学病院 ゲノム医療センター
センター長 新井田 要

 人間は約2万5千個の遺伝子を持ちますが、誰でも壊れて機能しなくなった遺伝子(遺伝子変異)を300個程度は持っています。どの遺伝子が壊れているかの組み合わせは人によって違うので、私たち一人一人は異なる生まれつきの体質(遺伝形質)を持っています。遺伝子変異は親から受け継ぐ場合もありますし、生まれてくる子供に突然変異として生じる場合もあります。遺伝子が常に変化し続けているために、人類は進化し、多種多様な民族に分かれていきました。遺伝子変異は個性の源であると同時に、遺伝性疾患の原因ともなります。遺伝子変異が原因による病気は7,000種類以上知られており、結節性硬化症もその一つです。結節性硬化症は、TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子の機能喪失型変異が原因です。様々な症状が出現しますが、その重症度や組み合わせは患者さん毎に大きな差があり、例えば同一家系内に複数の患者さんがいる場合(遺伝子変異は同一)でも症状には大きな差が生じます。結節性硬化症の遺伝の仕方は複雑で、患者さんの親や兄弟で一見無症状に見える方が実は軽症の患者であるということもよくあります。このような方を見逃さないように診断する方法として遺伝子検査があり、令和4年度より結節性硬化症の遺伝子検査は保険収載されるようになりました。遺伝子検査は軽症患者さんの診断と早期治療介入に役立つだけではなく、TSC1遺伝子とTSC2遺伝子のどちらに変異を持つかにより重症化のリスクが異なるため、患者さんのてんかんや発達の予後の推定や、患者さん自身が挙児を希望する際にも有用な情報を与えます。ただし遺伝子検査には技術面、心理面、倫理面に関わる様々な問題点もあり注意を要します。本講演では、人間の遺伝的多様性と結節性硬化症の遺伝および遺伝子検査に関して分かりやすく解説いたします。

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