1.結節性硬化症について患者ご家族/初学者向けショートレクチャーズ①
座長 信州大学医学部内科学第一教室 特任講師 林田美江
全体像のお話
鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科
准教授 岡西 徹
結節性硬化症(TSC)は外胚葉もしくは中胚葉系である脳、眼、心臓、腎臓、皮膚などに過誤腫もしくは過誤組織を呈する疾患である。また脳機能の問題として発達の遅れ、発達障がい(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など)、思春期以後の精神疾患も発症しうる。発生頻度は海外の文献では6,000人に1人と報告されている。TSCはTSC1もしくはTSC2遺伝子の機能喪失変異を起こすことでmTORが活性化して過剰な蛋白合成や細胞増殖、細胞分裂を促すことで発症する。
TSCの患者は新生児期には心筋腫瘍、乳幼児期にはてんかん、発達の遅れ、発達障がいと皮膚症状が問題となりやすく、その後は上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫(AML)、肺(LAM)、精神疾患などの管理が生涯にわたり必要とされる。TSC関連疾患の治療薬としてmTOR阻害薬が登場し、SEGA、AML、LAM、皮膚症状、てんかんなどに高い効果があることを証明された。
近年、TSCの診療の見直しがなされ、総合外来が海外で始まると、日本でも総合外来が各地で開設されてきた。また海外でTSCの診療に従事する医師たちのエキスパートオピニオンが2012年に報告され、効率的な診断、検査、治療方法が総合的になされるように提言された。これらの診療の改善から、今後は早い段階での疾患の発見、診断が可能になり、治療介入も早期から行うようになると考えられる。幼少期から人生全体を見つめての診療や療育が行われ、よりQOLの高い人生を送れるような体制づくりが期待される。
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