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記念すべき第10回日本結節性硬化症学会の会長をさせていただきます鳥取大学脳神経小児科の岡西 徹と申します。このような貴重な機会を10周年に拝命できたことを大変光栄に思います。

 

私が結節性硬化症に深く関わりを持ったのは、2011年にてんかん学の研鑽のため留学したカナダ国のトロント小児病院において、ラボのヘッドより結節性硬化症のてんかんについて研究を指示されたのが始まりで、偶然によるものでした。それまでは一般の小児科医、小児神経科医における程度の結節性硬化症への理解と診療経験しかなく、この研究によって、結節性硬化症のてんかんが如何に複雑かということを、最先端の学問を通して深く知ることになりました。

​第10回日本結節性硬化症学会学術総会開催にあたり

帰国してから、聖隷浜松病院てんかんセンターにて、特に難治のてんかんを有する患者さんの診療を多く経験しました。同センターのてんかん外科の藤本礼尚先生が私の研究経験を知り、「一緒に結節性硬化症の総合外来をしよう」と言われたのがその次の結節性硬化症との出会いでした。2014年の開始から短期間で100人以上患者さんを診療し、とくに複雑なてんかんの患者さんも治療し、医師としての充足感も感じつつ過ごすことができました。

 

この外来を発足すると同時期に、本学会の存在を知り、深くかかわることになりました。すでに長く結節性硬化症をライフワークとされて、功績も貢献も目覚ましい大先輩の先生方に交じり、新鮮な気持ちで学会に関われたことは人生の宝です。そしてもう一点、この学会の最大の特色は、患者さんご家族が学会運営に多数関わっておられることにあります。患者ご家族との共同運営は、患者サイドからの自分たち医師への目線を考えざるを得ず、ほかの学会にない臨床医としての緊張感と楽しさを感じています。

 

今回、学会のテーマとして『人生を見つめる診療育』を挙げさせていただきました。私は小児科医ですので、赤ちゃんから中学生くらいの患者さんと接することが多いのですが、診療ではまさにこれからの彼らの人生のために、結節性硬化症という病気といかに付き合ってゆくかを、早い段階で次々と決断しなければなりません。私はさらに小児神経科医であるので、患者さんの神経学的な予後・発達・行動障害なども向き合わなければならず、療育の観点からも診療をしなければなりません。

 

本学会を通じて、患者さんが幼い段階から、人生の坂を見上げて登ってゆく姿を想像しながら日々の診療する意識を、患者・医療者たちが共有と発展させることに繋がることを祈ります。

​2022年6月             

第10回日本結節性硬化症学会学術総会

大会長 鳥取大学脳神経小児科

准教授 岡西 徹

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