4.共催セミナー(テーマ:てんかんへの迷走神経刺激療法(VNS)①)
座長:愛知医科大学小児科学講座 教授 奥村彰久
TSCに伴うてんかんへの迷走神経刺激療法
このような時に行う治療の切り札
講師:鳥取大学脳神経小児科
准教授 岡西 徹
結節性硬化症(TSC)は殆どの患者においててんかんを発症する。発症時期は乳児期が多く、てんかん発症者の8割は3才までに発症している。また発症者の4割近くがWest症候群と呼ばれる、発達に影響する乳児期の難治のてんかんを発症し、またTSCのてんかん全体では50-70%において2剤以上の抗てんかん薬に耐性の「難治性てんかん」となる。治療には最初は抗てんかん薬を用いるが、West症候群ではビガバトリンやACTH療法に主軸をおいた治療となり、他のてんかん(焦点てんかん)ではエベロリムスを追加することも多い。
これらの内科治療を行ってもさらに発作が残存する場合には特殊な治療法が選択される。その中には開頭外科治療(脳外科治療)、迷走神経刺激療法(デバイス治療)、食事療法があげられる。開頭外科治療の適応がある場合は、有効性が高いため行うことが推奨されるが、開頭外科治療が不適応(手術が技術的・精神的に困難)の場合や、行っても効果不十分の場合には迷走神経刺激療法と食事療法から治療が選ばれる。
迷走神経刺激療法は患者の左胸部の皮膚の下にジェネレーターを埋め込み、左頸部にある迷走神経にリード線を経由して電流刺激を送る。迷走神経に送られた電流刺激は延髄や視床に波及して、てんかん発作の発生を抑えたり、発作の広がりを抑えたりすると考えられている。近年は発作時の心拍上昇に連動してオート刺激を追加で送る機能が追加されており、近年は50%以上発作が減少する割合が治療患者の7割程度に達している。TSCのてんかんに対しての迷走神経刺激療法の効果を調べた報告は少ないが、一般的な難治性てんかんへの効果よりも有効性が高い可能性が示唆されている。
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