康本徳守記念結節性硬化症関連神経難病研究助成演題
2.康本徳守記念結節性硬化症関連神経難病研究助成演題②
座長:東京大学 大学院医学系研究科 国際保健学専攻 発達医科学分野 名誉教授 水口雅
単一細胞レベルでの遺伝子発現および変異解析技術を駆使したリンパ脈管筋腫症(LAM)の病態解明
演者:瀬山 邦明1)、眞鍋 理一郎2)、関本 康人1)、森次 望美2)、光石 陽一郎1)、
三谷 恵子1)、早津 徳人2) 、木下 紘子2) 、野間 将平2)、平田 智子2)、
高橋 知登世2) 、田上 道平2)、林 大久生1)、岡﨑 康司2)
1) 順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学
2) 理研・IMS・応用ゲノム解析技術研究チーム
リンパ脈管筋腫症(LAM)は主に閉経前の女性に発症する希少疾患で、結節性硬化症に関連するLAMと孤発性LAMが知られている。がん抑制遺伝子TSC(主としてTSC2)に変異を持つLAM細胞の増殖により多数の嚢胞形成により呼吸不全を生じる。LAM細胞では、体細胞変異によるTSC2機能喪失、いわゆるtwo-hit仮説が適応すると考えられている。しかし、そのような細胞はシングルセルレベルでいまだ同定されておらず、そのためLAM細胞ひいては病態の理解も十分とは言えない。本研究ではLAM患者の乳び胸水中のLAM細胞クラスター(LCC)を単離し、シングルセルRNA-Seq解析を実施した。得られたデータからTSC2変異解析および遺伝子発現プロファイリングを行った。その結果、TSC2に2つの体細胞変異を持つtwo-hit細胞を同定することに成功した。この細胞は多くの既知LAM細胞マーカー遺伝子を発現していた。また、統合解析により、LAM肺にもLCCのtwo-hit細胞と同様な遺伝子発現プロファイルを持つ細胞を同定した。一方、LCCとLAM肺では、これら細胞の遺伝子発現プロファイルの一部が異なっていたことから、胸水中のLAM細胞と肺のLAM細胞ではその環境により性質が異なっていることが示唆された。